「オダヤカナヒ」その4(最終回)

いつの間にやら…

目が覚めて時計を見ると4:50頃。部屋の電気もテレビもつけたまま。カーテンもレースのを閉めているだけ。おまけに自分は掛け布団の上に寝転がっている状態。どうやら昨晩、窓から列車を眺めているうちに自分でも気付かないまま寝落ちしていたようだ。いやはや…。
モーニングコールを6:53に設定してあるので、それまでちゃんと布団にもぐって二度寝。6:53のモーニングコールでちゃんと目覚めた。なんで6:53だったのかは自分でも意味不明だ(謎笑)。

出庫

今朝は宮崎8:46発の鹿児島中央行き普通列車でスタートするので、せかせかする必要はない。7:00にロビーへ降りて、1045の無料朝食サービスをいただく。おとといの佐世保では出発時間が早くて朝食を食べられなかったのもあって、ガッツリといただきました(笑)。
身支度を済ませて、8:00過ぎにチェックアウト。あ、冷蔵庫に入れておいた日向夏ドリンクをWAWAWA忘れ物してしまった…。

都城

九州一周の旅「オダヤカナヒ」も今日でいよいよ最終日。宮崎から都城へ出て吉都線に乗換えて、そのまま肥薩線で隼人へ南下し、隼人からは特急「はやとの風」、観光列車「しんぺい」、特急「九州横断特急」のリレーで肥薩線を北上して新八代へ抜けて、「リレーつばめ」で博多へ戻り、最後は「ひかりレールスター」で岡山へ帰省する計画だ。
列車の時間までまだ余裕があるので、宮崎駅のコンビニ「生活列車」で実家への土産と、宿に置き忘れてしまった日向夏ドリンクを買う。


宮崎8:46発の鹿児島中央行き普通列車6941Mは817系の2両編成、ワンマン運転。後ろの車両となるクモハ817に乗車し、都城まで1時間弱の間、革の枕に身をゆだねる。ついウトウトしそうになるが、乗り過ごしては大変なのでこらえる。9:40、都城着。都城といえば東国原知事の出身地でもある。

都城駅


次に乗る吉都線の列車2927Dは10:12発で、まだ30分ほど時間がある。外に出て駅舎を撮影。ずいぶん古びた感じだ。吉都線には宮崎を1本後に出る729Mでも1分接続で間に合うのだが、せかせか乗り換えるのも…、と思い余裕を持たせた。

みどりの窓口で客が「『せんだい』まで…」と言っているのを聞いて、九州から仙台かと思ったが、よく考えると「川内」のことね。


古びたホームにLCDの発車案内。

吉都線

2927Dはキハ40の2両編成、ワンマン運転。運転台寄りのロングシートで運転士さんが休憩中。僕がノートに車番を書いていると、運転士さんが「番号控えとっと?」と聞いてきた。これをきっかけにしばし雑談。この列車で隼人へ抜けて、「はやとの風」でバックすることを伝えると、「ああ、『しんぺい』と横断特急で八代の方へ抜けるとね。」と。こんなことが出来るのはローカル線ならでは。

729Mからの接続を受けて出発。その729Mは、昨日大淀川で撮影した717系900番台だった。乗車記録をつける分にはこちらの方が面白かったか。

都城を出ると、左手に日豊本線が去っていく。車内は地元客と、旅行客が半々と言ったところ。


吉都線は左手に霧島連山を見やりながら、坦々とした景色が続く。11:01、吉都線内でも唯一の有人駅、小林に到着。


列車の停止位置がよかったので、駅名標を撮影。小林といえば画伯(謎爆)。

えびのを過ぎ、次の京町温泉を出るといったん宮崎県とはお別れ。「いったん」と書いたのは、後で肥薩線に乗車する際、真幸駅が宮崎県にあるため。

次の鶴丸からは昨日に続いて再び鹿児島県に入り、11:41、吉松着。列車は19分間の小休止をはさんで、肥薩線で隼人へ向かう。隣のホームからは肥薩線の観光列車「しんぺい2号」の人吉行きに接続しており、それに乗り換える人も。「しんぺい2号」は所定の編成である赤いキハ40系の2両編成に、九州色のキハ47とキハ31を増結した4両編成だが、今日から本格的なGWとあり、所定の編成は賑わっている。これには乗り換えずにこのまま2927D改め4231Dで隼人まで乗り続けるが、19分の停車時間を使っていったん外に出る。

4231Dで隼人へ

吉松の窓口でこの後乗る予定の「しんぺい4号」の指定席が残っているか尋ねたら1席だけあったので、発券してもらう。券面には「中継」と「吉松駅POS発行」の表記がある。あわせて「鶴丸から吉松経由真幸ゆき」の「幸福の鉄道乗車記念きっぷ」(\270)も購入して、車内へ戻る。
12:00に出発した4231Dは隼人へ向けて南下する。時期を反映して沿線には鯉のぼりも見られ、長閑な農村地帯をたどる。霧島温泉を過ぎた辺りで山間に入る。
左から都城で分かれた日豊本線と再び合流し、12:52、隼人着。


隼人といえば谷隊長!
…少なくとも20代後半の人でないと「風雲!たけし城」のことは分からないでしょうね。東国原知事もかつて出演していました。
Wikipediaによると谷隊長は実際にここ隼人の生まれだそうで。


隼人駅には暖簾がかかっている。駅名の左側にある○と+のマークは薩摩の大名、島津家の家紋。

はやとの風

次に乗る13:49発の特急「はやとの風4号」までは1時間弱あるので、この間に外に出て、昼食の買出し。駅前の県道に出てみると、Aコープを見つけたので弁当と飲み物を買う。「鹿児島地産地消弁当」という、鹿児島にちなんだ食材の入った弁当。確かにサツマイモの天ぷらがあったな。列車を待つ間にホームのベンチで食べておく。


特急「はやとの風」は地元の岡電「KURO」にも似た、車体を黒で塗装したキハ40系改造の編成。両者ともデザイナーは水戸岡さんだから、似ていて当然か。ちなみに水戸岡さんは岡山出身で、それが縁で岡電の低床電車「MOMO」以来、岡電の電車・バスや、同じく両備グループの傘下である両備バスおよび和歌山電鐵の車両デザインも手がけるようになっている。

自由席は混雑しているかと思ったがその心配は杞憂に終わり、楽に座れた。この列車は2004年3月13日の九州新幹線開業に合わせて登場し、車両が一般形気動車からの改造と聞いて驚いたが、実際に車内を観察すると、よくぞここまで改造しましたねと言いたくなる。車両の中央部には展望スペースが設置され、窓が高さいっぱいに設けられている。観光列車らしく、途中の停車駅では停車時間が5分ほど設けられていた。客室乗務員のお姉さんから「はやとの風」のクリアファイルを買い求めたり、時おり展望スペースで流れ行く景色を楽しんだりしつつ、14:47に吉松着。

しんぺい

吉松ではホームの対面で人吉行き「しんぺい4号」に2分で接続。すぐに乗り換える。所定の編成である赤いキハ40系改造車2両に、一般形のキハ147、キハ31を1両ずつ増結したすごい編成。先ほどこの駅で発券してもらった指定券に示された席に着席したが、後ろ向き通路側の席だったのと、転換式クロスシートを装備した先頭のキハ31が空いていたので、程なくしてキハ31へ移った。

次の停車駅、真幸(まさき)では地元の人々からの歓迎を受け、鹿児島県から再び宮崎県に戻ってくる。「しんぺい」も「はやとの風」のように、各駅での停車時間が7分取られているので、列車を降りて記念撮影などをすることも可能。この間に編成を撮影。


人が多いので引きが取れず、広角気味ですが。
画像の左側に見える屋根の下には真幸という駅名にちなんで「幸せの鐘」があり、鐘を鳴らす人もいる。僕も鐘を鳴らしてから、列車に戻る。


真幸駅を出発し、地元の人々に手を振ってお別れ。この駅はスイッチバックで、上の画像右側の線路が吉松方面から真幸駅のホームへ通じる線路。画像左側の線路が人吉方面に通じる線路。このような線路配線なので、肥薩線の列車はこの駅に必ず停車しないといけない。


次の矢岳へ向かう間の、「矢岳越え」の景色はとにかく絶景。列車も一時停止して景色を堪能できるサービスをしてくれる。肥薩線に乗ってよかったと思える瞬間。


矢岳には「人吉市SL展示館」があり、D51 170が展示されている。


標高標識と「しんぺい」を絡めて撮影。


次の大畑へ向けて、ループ線を進んで行く。ここでも景色を楽しめるよう、列車は徐行してくれる。僕も「かぶりつき」をすることが多かったので、キハ31に移っておいて正解だった。

大畑駅ループ線の中にスイッチバックを併せ持つ構造になっていて、ホームへはバックして進入する。


「大畑」と書いて「おこば」と読みます。


とても味のある駅舎。

大畑で元の進行方向に戻り、再度ループ線を進んで行く。真幸から大畑にかけての車窓風景は本当に絶景で、ただただ感動。「しんぺい」車内でも客室乗務員のお姉さんからクリアファイルと、キーホルダーも買い求めた。山を降りて次第に家並が増えてきて、球磨川を渡ると程なくして人吉に到着。時刻は16:03。

九州横断特急



人吉では6分で「九州横断特急8号」に接続する。車両はキハ185系。もともと国鉄末期に四国に投入されたが、JR四国が振子式の2000系気動車を投入してから車両を持て余すようになり、当時急行列車の車両置き換えを検討していたJR九州に売却されたもの。かつては特急「しおかぜ」「南風」「うずしお」にも使われ、瀬戸大橋を渡って岡山にやって来ていたので個人的には見慣れた車両だ。ヘッドマークや車体のレタリングは特急「ゆふ」用であることを示す「YUFU EXPRESS」となっているが、「かもめ」と「ソニック」の885系があべこべになることがよくあるJR九州のことだから、突っ込んだら負けか。自由席となっている先頭車両に乗車し、進行方向右側の席に座る。


人吉を出発して、渡駅を通過してしばらくすると進行方向右側に球磨川が寄り添ってきて、車窓の友となる。地図を見るとよく分かるが、この球磨川に寄り添うように進む線形のためカーブが多い。そのためスピードも大して出ないが、車窓風景を楽しむにはこれぐらいの方がちょうどいいか。

鎌瀬の手前で球磨川が進行方向左手に移るが、球磨川に寄り添うように進む線形は変わらない。車内でくつろいでいると、客室乗務員のお姉さんが乗客全員に飴を配るサービスがあった。この車内でもグッズを買い求めたが、「九州横断特急」のクリアファイルはなく、「あそ1962」のクリアファイルを買った。

肥薩おれんじ鉄道の下をくぐると八代に到着し、鹿児島本線に入って17:13、新八代着。

リレーつばめ


新八代で17:34発の「リレーつばめ18号」に乗り換える。「リレーつばめ」は九州新幹線「つばめ」と対面で容易に乗換えが出来るよう、新八代では在来線とは別に設けられた新幹線ホームに発着する。このため、在来線から「リレーつばめ」に乗り換える場合はいったん改札を出場し、新幹線ホームに再度入場することになる。ゾーン券を新幹線ホームの自動改札機に投入すると撥ねられてしまったが、係員氏が切符を確認しすぐに通してもらえた。周遊きっぷの九州ゾーンは九州新幹線に乗車できないため、あくまでも新幹線の改札口であるこの自動改札機はエラーと判断したのだろう。


さて、この「リレーつばめ18号」が今回の旅で乗る、JR九州の列車としてはラストランナーとなるわけであるが、せっかく787系に乗るのだから…、ということで、またもグリーン車に乗る(爆)。実は今朝、宮崎駅で列車に乗るまでの時間に余裕があったので、ついみどりの窓口でグリーン券を発券してしまった。今回の旅で2回目のグリーン車、B特急券込で総額\6,420の追加投資を伴ったが、「みなみけ」のDVDを1枚買うよりも安いのだから(笑)、この追加投資で快適な座席に座れるのはお買い得と考えるべきか。


今回の旅では縁がなかったが、鹿児島中央からやって来た800系「つばめ18号」をえいやっと撮影。後で調べて分かったが、「つばめ18号」は鹿児島中央新八代をノンストップで結ぶ便なのね。「リレーつばめ」とはわずか3分の接続なので、撮影して「リレーつばめ」に乗り込むとたちまち発車時刻となった。持ち前の性能と線形のよさを活かして、さっそく最高速度130km/hで疾走する。

787系のグリーン席はかなりの優れもの。座席右側のボタンで背もたれのリクライニングを行い、左側のボタンで背もたれの上半分を動かすことができ、好みの姿勢で座席の角度を調節することが可能。

客室乗務員のお姉さんから車内改札を受け、ドリンク引換券も一緒に渡してアイスコーヒーを注文する。これこそがJR九州ならではのサービス。しかも他のJR旅客5社より料金が安い。もっとも、九州の人にとっては値段を他のJRと比較しても無意味で、実際に比較する相手は高速バスになるのだろうが。

アイスコーヒーを飲みながら車窓を眺め、鹿児島本線を北上する。815系に加えて817系ともすれ違い、817系は九州の電化路線にほぼ満遍なく浸透している様子が伺える。熊本を出ると次は大牟田で、もう福岡県に戻ってくる。「リレーつばめ18号」は速達タイプなので、大牟田の次は久留米。速い。

鹿児島本線は時おり、建設中の九州新幹線高架橋と並びながら進むが、昼間は準快速が折り返す駅としても知られる羽犬塚は駅のすぐそばを高架橋が通っているのが印象的だった。

久留米は7年前に下車したことがあるが、九州新幹線建設に伴う工事のため、当時とは様子がずいぶん変わったように見えた。

鳥栖を出ると次はもう終点の博多。九州に来るとこの区間はしょっちゅう通るので、すっかり見慣れた景色。19:08分、博多着。新八代から博多までの151.3kmを1時間34分で走破したから、表定速度は96.6km/hとなる。これでいよいよ九州とお別れなので、名残惜しい気分になる。

夕食にとんこつラーメン


帰りの新幹線まではまだ1時間30分もあるので、この間に夕食。初日に博多駅の地下街を通った時に気になっていた「ラーメン亭」でチャーシュー麺を食べたら、スープが僕好みの味で、とても美味かった。昔ながらのとんこつラーメンという感じがする。普通のラーメンが\420、今回食べたチャーシュー麺が\520という価格も良心的。

はやい・おっきい・やわらかい(爆)



九州一周の旅もいよいよグランドフィナーレ。トリをつとめるのは博多20:40発の「ひかりレールスター588号」。最後の最後にお楽しみを取っておいた。レールスターに乗るからにはもちろんサルーンシートの指定席。乗るのは6年ぶりだが、やはり2+2列のサルーンシートは快適。「のぞみ」に準じた速さだし、サルーンシートは大きくてやわらかいので、誰が言ったか知らないがまさに「はやい・おっきい・やわらかい」という言葉が相応しいですね(ぉ
あと2年で九州新幹線が博多まで全通し、その時にはレールスターも「こだま」に転用されるとのことなので、乗れるのも今のうちか。

20:40に博多を出発し、いよいよ岡山への帰路につく。わずか16分で小倉に到着し、1分停車の後、発車。すぐに新関門トンネルに入る。さよなら九州。感動いっぱいありがとう。

すでに真っ暗で車窓は広がらないので、サルーンシートの座り心地を堪能し、4日間の余韻に浸る。22:32、岡山着。在来線ホームに下りて、115系や213系の姿を見ると、岡山に帰ってきたことを実感。岡山22:45発の快速「マリンライナー71号」に乗車して実家に帰り、今回の旅「オダヤカナヒ」は幕を閉じた。

まとめ

今回は「オダヤカナヒ」のタイトルに相応しく、4日間とも天気に恵まれたのがよかった。

今回の旅行にあたって、今まででいちばん印象に残る旅にしようと思い、乗りつぶしをしつつ撮影もしたい、そして観光もしたいという欲張りな計画を立てたのだが、乗りつぶしは初日の原田線、2日目の大村線と長与経由の長崎本線、3日目の日南線、最終日の吉都線肥薩線と各日実行でき、撮影は初日の西小倉、天拝山−原田および3日目の宮崎−南宮崎(大淀川鉄橋)で実現した。そして観光は「sola」舞台探訪目的で、2日目に長崎の街並みを改めて回ってみたが、長崎の魅力を再確認した旅でもあった。稲佐山に行けなかったのが心残りだけど、また長崎に行くことがあれば、じっくり見たいと思う。

そしてなんといっても感動したのが最終日に乗った肥薩線。もともと車窓風景には定評のある路線だが、九州新幹線開業とリンクして生まれた「はやとの風」「いさぶろう・しんぺい」「九州横断特急」がより一層の魅力を演出しているように見えた。

やっぱりJR九州の特急列車は素晴らしい。またいつの日かぜひ、九州を訪れたいものだ。

「また会う日は 決して遠くはない そうでしょう?」

…「sola」のエンディングテーマ「mellow melody」を帰りの「ひかり588号」で聴いていると、この歌詞が強く心に刻まれた。

(完)