日本最低をめざすバス会社

岡山駅前桃太郎大通りを歩くと、大都会岡山に相応しく(←、実に多くのバスを見かけます。県下最大のバス会社である両備バスを筆頭に、岡電バス(これも両備グループ)、下電バス中鉄バス、宇野バス。

その中でも注目すべきバス会社、宇野バス(宇野自動車)の魅力を語りたいと思います。
宇野バスは宇野線の終点である宇野に向かうバスかと思いきや、さにあらず。経営者が宇野さんだから宇野バスです。宇野とは正反対の方向、赤磐市の山陽団地や岡山ネオポリス、国道2・250号方面などの、岡山駅より東側に路線を有しています。
この会社、県内の同業他社とは一線を画す営業施策を行っています。まず会社コンセプトが「日本最低をめざすバス会社」。…日本最高を目指すのなら分かりますが、日本最低って。と言いたくなりますが、何の日本最低を目指しているのかといえば…、

運賃です。対キロ区間制運賃を採用しているバス会社の中では日本で3番目に安い基準賃率とのことで、岡山県内では最も安い賃率です。JRと競合する区間では宇野バスの方が安くなる場合さえあります。
岡山駅〜表町バスセンター間の運賃を150円から100円に値下げしたときはローカルニュースでも採り上げられました。



車両面の特徴といえば、屋根上のマーカーランプが目につきます。行先表示は現在ではLEDに更新され、方向幕は全廃されてしまいましたが、方向幕を使用していた頃は行先にふりがなが付与されており、これも他社にはない特徴でした。湯郷温泉林野駅行だと「ゆのごうおんせん・はやしのえき」といった具合に。
あと、保有車両全車がツーステップ車。これには理由があって、ノンステップバスまたはワンステップバスでは座席定員が減少するため、着席サービスの低下につながるという考えがあって、ツーステップ車にこだわっている由。
しかし交通バリアフリー法の施行によって新車はノンステップバスまたはワンステップバスでなければならなくなったため、今後車両更新をどのようにして行うのか注目されるところです。法施行前の宇野バスは車両の代替が非常に早いことで定評があり、10年程度で新車に替えていたのですが…。
もっともツーステップ車とはいえ、決してバリアフリーに逆行しているわけではなく、タイヤを小型化して低床化し、少しでも乗降が容易になるよう配慮されています。


現在ではUVカットガラス装着をアピールした文言になっていますが、かつては入口横にこのような掲示がありました。なるほど、車高が低くて(物理的に)乗りやすいバスと、運賃が低くて(心理的に)乗りやすいバスをかけているんですね、わかります。


外観の画像からでは分かりにくいですが、座席は背ずりの高いものが採用されています。乗車距離が比較的長い利用客が多く、長時間乗っても疲れにくいようにというのが理由とのこと。
他にも車内に宇野バス専用バスカード*1の自販機が設置されている点や、他社が岡山市の商業の中心地である、表町の天満屋バスステーションに乗り入れる中、宇野バスだけは天満屋ではなく、隣接した本社併設の表町バスセンターに乗り入れるといった、独自の施策を見出すことが出来ます。
表町商店街へは表町バスセンターからの近道通路を通れば階段なしで行けるので、天満屋バスステーションよりも表町バスセンターからの方が便利だったりします。

宇野バスに縁がない地域に住んでいるのにここまで宇野バス沼にハマった理由、そもそものきっかけは大学時代の就職活動における宇野バスの会社説明会です。本エントリーの内容は会社説明会の際に宇野社長から直々に伺った内容に基づいたものも多く含まれており、「独自性の強い営業施策を展開してるんだなあ」と感銘を受けたものです。

岡山へお越しの際は、一度宇野バスに乗ってみてはいかがでしょうか。

*1:廃止された共通バスカードの代替として発売された